従来の運転免許が不要になるAGFの自動化技術

物流業界において、深刻化する人手不足と労働災害の課題を解決する新たな技術として、AGF(無人フォークリフト)が注目を集めています。この革新的な自動化技術により、従来のフォークリフト運転に必要だった免許要件が大きく変化し、物流現場の運営方法が根本的に変わろうとしています。
AGFの基本概念と技術特性
AGFは、コンピューター制御により完全無人で荷物の搬送作業を行うロボットシステムです。従来のフォークリフトとは異なり、人間が直接運転操作を行う必要がないため、最大積載荷重1トン以上のフォークリフトに必要な「フォークリフト運転技能講習修了証」という国家資格を取得した運転手を配置する必要がありません。
この技術は、LiDAR(レーザーレーダー)を用いたSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)による自己位置推定技術や、センサーによる障害物回避機能を搭載しており、プログラムされたルートに従って自律的に作業を実行します。製品や材料といった重量物の搬送、入出庫、出荷、ピッキングなどの作業を24時間連続で行うことが可能です。
従来のフォークリフト免許制度の課題
先ほどもあったように、現在の日本では、フォークリフトの運転には厳格な資格要件が設けられています。最大積載荷重1トン以上のフォークリフトを運転するためには、労働安全衛生法に基づく国家資格である「フォークリフト運転技能講習修了証」の取得が義務付けられています。この講習には最大35時間を要し、受講料は15,000円から50,000円程度の費用がかかります。
厚生労働省のデータによると、フォークリフト運転技能講習の新規修了者数は2021年度に約21万2,000人となり、ピークだった2007年度から21%も減少しています。さらに、運転手の高齢化も深刻で、早晩全国でフォークリフト運転手の奪い合いが起こる事態が想定されています。
AGF導入による免許要件の変化
AGFの最大の利点は、人間による直接的な運転操作が不要であることです。システムが自動で荷物の搬送を行うため、従来のフォークリフト運転免許を持つ作業員を確保する必要がなくなります。これにより、物流現場では以下のような変化が生まれています。
まず、人材確保の難しさが大幅に軽減されます。フォークリフト運転手は専門的な資格が必要なため、一般的なスタッフよりも採用が困難でしたが、AGFを導入することで、この課題が解消されます。また、時給単価の上昇や人材の定着率の問題からも解放されます。
さらに、労働災害のリスクも大幅に削減されます。
有人フォークリフトによる発生事故
2023年度のフォークリフト労働災害は、死傷事故1,989件・死亡事故22件という結果となりました。前年度比では死傷事故が減少傾向を示したものの、依然として産業現場における重大なリスク要因であることが明らかになりました。
特に「はさまれ・巻き込まれ」事故が全体の38%を占め、安全対策の重点領域が浮き彫りになりました。
フォークリフト作業における労働災害は重大な事故につながりやすく、人的ミスによる事故が後を絶ちませんが、AGFは プログラムによって自動制御されるため、こうした事故を大幅に減少させることができます。
年 | 死傷災害(件) | 死亡災害(件) |
---|---|---|
2023 | 1,989 | 22 |
2022 | 2,092 | 34 |
2021 | 2,028 | 21 |
2020 | 1,989 | 31 |
2019 | 2,145 | 20 |
AGF運用における管理要件
ただし、AGFが完全に免許不要というわけではありません。システムの運用には適切な管理と監視が必要です。AGFの設定、プログラミング、保守作業には専門的な知識が求められ、緊急時の対応や安全管理についても適切な教育を受けた担当者が必要です。
また、AGFが公道を走行する場合には、道路交通法に基づく特別な許可や免許が必要となります。現在の法規制では、遠隔監視と操作が義務付けられており、完全な無人運行は認められていません。
経済効果と導入メリット
AGFの導入により、人件費の大幅な削減が実現できます。24時間稼働が可能なため、従来よりも生産性が向上し、夜間や休日の作業も継続して行えます。また、フォークリフト運転手の求人広告費用や教育コストなど、副次的なコストも削減されます。
作業効率の面でも大きな改善が期待できます。AGFは疲労することがなく、一定のパフォーマンスを維持し続けるため、人間による作業の変動要因が排除されます。荷物の取り扱いについても精密な動作を行うため、落下による破損といった事故も防ぐことができます。
技術発展の現状と将来展望
2022年時点で、日本国内のフォークリフト販売台数は約8万3,000台に対し、AGFの販売台数はわずか200~300台程度でした。しかし、フォークリフト運転手の人材確保問題とAGFの技術進化・低価格化により、この「眠れる市場」が本格的に立ち上がろうとしています。
AGFの技術革新は、特にAI技術の進化により加速しています。AIを用いることで、AGFは環境の変化をリアルタイムで認識し、学習する能力が向上したため、従来モデルに比べてより高度な判断を行うことが可能になっています。
結論
AGFの普及により、物流現場における従来のフォークリフト運転免許の重要性は大きく変化しています。完全無人で動作するAGFは、直接的な運転操作が不要であるため、従来の免許制度に縛られることなく導入できる革新的な技術です。人手不足の解消、労働災害の削減、コスト削減、作業効率の向上など、多方面にわたってメリットをもたらすAGFは、今後の物流業界の自動化を牽引する重要な技術となることが予想されます。
ただし、適切な運用管理と安全対策は依然として重要であり、AGFの導入に際しては、システム管理者の適切な教育と体制整備が不可欠です。技術の進歩とともに法規制の整備も進んでいくことで、より安全で効率的な物流システムの実現が期待されています。
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