2025.06.10 2025.06.20

AGF(無人フォークリフト)のよくある誤解

saaya

近年、物流業界では人手不足や労働災害の削減を目的として、AGF（無人フォークリフト）の導入が急速に進んでいます。しかし、この新しい技術に対する理解不足から、多くの誤解が生じているのが現状です。AGFは2D-LiDARやレーザー誘導方式を活用した自動運転技術により、人が操作することなく無人で搬送を行えるフォークリフトロボットですが、その特性や運用方法について正しく理解されていないケースが数多く見受けられます。本記事では、AGFに関するよくある誤解を整理し、正しい理解を促進することで、適切な導入判断に役立てていただくことを目的としています。

速度に関する誤解

「AGFは速いほど良い」という誤解

多くの企業が作業効率を向上させるため、AGFの走行速度が速いほど良いと考える傾向があります。しかし、この考え方は大きな誤解です。AGFが速すぎると、制動距離が長くなり、慣性により荷物が転倒する可能性があり、重大な安全上の問題が発生する可能性があります。

実際のAGFの運用では、安全性を最優先に考慮した速度設定が重要です。多くの現場では、安全性を考慮して時速0.36km/hという非常に低速で設定されることもあります。AGFには360度全方向検知できる障害物回避レーダーが搭載されており、前方に人や障害物があれば自動で停止する機能があるため、適切な速度での運用が安全性確保の鍵となります。

「AGFは人より遅い」という誤解

一方で、AGFは人が操作するフォークリフトよりも遅いという誤解も広く存在します。確かにAGFの走行速度は人が運転するフォークリフトよりも控えめに設定されることが多いですが、これは安全性を重視した結果であり、実際の作業効率は単純な速度比較では測れません。

AGFは24時間稼働が可能であり、休憩や交代なしで一定のペースで正確な作業を続けることができます。人間のような疲労による作業効率の低下もなく、継続的な物流オペレーションが実現できるため、総合的な生産性は大幅に向上する可能性があります。

「初期コストが高すぎる」という誤解

AGFの導入に際して、初期コストの高さを理由に導入を躊躇する企業が多く存在します。確かにAGFの導入には本体費用に加え、インフラ整備やシステム開発が必要であり、中小企業にとっては大きな投資となります。

しかし、長期的な視点で見ると、人件費の削減、事故による損害コストの削減、残業代などの付随的な人件費の抑制など、総合的なコスト最適化が期待できます。AGFは夜間や休日を含めた継続的な稼働により早期の投資回収が可能であり、ROI（投資対効果）を適切に検討することが重要です。

メンテナンスに関する誤解

「AGFはメンテナンス不要」という誤解

AGFは自動化されたシステムであるため、メンテナンスが不要だと考える企業があります。これは完全な誤解です。AGFのボディはさまざまな金属でできており、腐食性の物体と接触すると錆びやすくなります。また、定期的な保守点検が必要であり、システムトラブルが発生すると稼働停止のリスクがあります。

適切なメンテナンスには、AGFを清潔に保ち、ほこり、油汚れ、その他の破片を定期的に清掃することが含まれます。タッチスクリーン、制御装置、および操作パネル内のその他の電気部品は湿気による損傷を受けるため、乾燥した状態に保つ必要があります。多くのメーカーでは月次・年次点検の講習を提供しており、保全契約を締結することで継続的なサポートを受けることが可能です。

「AGFは柔軟性に欠ける」という誤解

突発的な作業変更に対応しづらく、臨機応変な判断ができないという誤解があります。確かに、磁気テープやQRコードを使用する従来型のAGFでは、レイアウト変更時に誘導体の張り直しが必要でした。

しかし、最新のAGF技術では、SLAM（自己位置推定とマッピング）方式やLiDAR技術を活用することで、マーキング不要での自動運転が可能となっています。これにより、倉庫のレイアウト変更にも容易に対応でき、限られたスペースを効率的に活用することができます。また、最新のシステムでは、マッピングとタスクの組み直しを短時間で完了でき、現場の人が自分たちで臨機応変に設定変更を行うことも可能です。

「即座に効果が現れる」という誤解

AGFを導入すれば即座に劇的な効果が現れると期待する企業がありますが、これも誤解です。AGFの導入には、適切な環境整備、走行エリアの障害物除去、セーフティ対策の実施など、様々な準備が必要です。

また、正確な位置決めが重要であり、パレットやラックの位置ずれが大きいと、正確なピッキングや積み下ろしができない可能性があります。作業環境全体での位置精度の管理が重要になるため、導入初期には現場の運用フローの調整期間が必要になることが多いです。

結論

AGFは、物流業界の人手不足や安全性向上に大きく貢献する革新的な技術ですが、その特性や運用方法について多くの誤解が存在しています。速度を追求しすぎることの危険性、コストの長期的な視点での評価の重要性、定期的なメンテナンスの必要性、技術選択における用途に応じた最適化の重要性など、正しい理解に基づいた導入検討が不可欠です。

AGFの導入を成功させるためには、現場の課題を正確に把握し、どの程度の自動化が可能かを慎重に試算することが重要です。全てを自動化するのではなく、有人フォークリフトとのハイブリッド運用など、自社の業務に最適な形を模索することで、AGFの真の価値を最大限に活用することができるでしょう。物流の未来を担うAGF技術について、正しい理解を深め、適切な導入判断を行うことが、企業の競争力向上につながると考えられます。