なぜより多くの荷役現場が有人操作よりもAGFを選ぶのか

近年、物流倉庫や工場などの荷役現場において、AGF(無人フォークリフト)の導入が急速に進んでいます。従来は人が担っていた作業を自動化する取り組みが増加する中、特に注目を集めているのがこのAGFです。2023年の世界のAGF市場規模は約984億円で、2030年までには約2085億円に達すると予測されており、年間複合成長率(CAGR)は11.3%と高い成長が見込まれています。本記事では、なぜ多くの荷役現場で有人操作からAGFへの転換が進んでいるのか、その背景と理由について詳しく解説します。
物流業界が直面する深刻な課題
慢性的な人材不足
物流業界では長年にわたり深刻な人材不足の問題を抱えています。特にフォークリフトの運転には資格が必要であり、適格なスタッフを確保することが難しい状況にあります。少子高齢化が進む日本では、物流業界全体が労働力不足に直面しており、限られた人材の確保が年々困難になっています。また、内閣府の試算によれば、対策を講じない場合、2030年度には貨物輸送量に対して約35%の輸送力が不足する可能性があると指摘されています。
安全性の問題
フォークリフトは労働災害が多い機械として知られており、厚生労働省の統計によれば、毎年2,000件あまりの労災事故が発生し、死亡事故も年間で30件近くを推移しています。荷役運搬機械による労働災害の中でも、フォークリフトによる事故が70%と大半を占めており、安全対策は喫緊の課題となっています。
労働時間規制への対応
2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間の上限が年960時間に制限される「2024年問題」により、物流業界は大きな転換点を迎えています。この規制によって、ドライバー1人あたりの走行距離が短くなり、物流の停滞や運賃上昇などの問題が懸念されています。
AGFを選択するメリット
作業効率の大幅な向上
AGFはプログラムされた経路に従って自動的に荷物を運搬するため、人手による作業よりも正確かつ迅速に行われます。従来の人間による作業では、労働時間の制約やスタッフの能力、モチベーションによって作業効率が変動することがありましたが、AGFの場合はプログラムに従って自動的に作業を行うため、作業の均一化が可能です。
また、AGFは24時間365日稼働することが可能で、休憩や食事の必要もありません。そのため、従来のフォークリフトよりも短時間でより多くの荷物を運搬することができ、物流のボトルネックを解消することが可能です。あらかじめ設定された動きは予測可能であるため、作業のムダを減らし、全体の作業効率が大幅に向上します。
安全性の向上
AGFには高性能な障害物検知センサーが搭載されており、作業エリア内の障害物や人を自動的に感知して停止することができます。これにより、フォークリフトによる落下や運搬中の接触事故など、人身事故のリスクを大幅に低減できます。
また、AGFはプログラムされた通りに正確な作業を行うため、人的なミスやヒューマンエラーによる事故の可能性も減少します。センサーによって障害物を検出し、適切に回避することも可能です。特に危険な環境での作業においては、AGFの安全性は大きなメリットとなります。
労働力不足の解消
AGFの導入により、人手を必要とせず24時間体制で作業を続けることができるため、人手不足の解消に大いに寄与します。フォークリフトに乗る有資格者の確保が難しい現状においても、AGFであれば自動で荷物の運搬や積み下ろしが行えるため、人材確保の問題を解決できます。
特に、「2024年問題」のような労働時間規制が強化される中、AGFは物流の停滞を防ぐ有力な解決策となります。トラック運転手を貨物の積み降ろしの作業から開放することで、1日のシフトあたりの労働時間数が最大25%削減されるという試算もあります。
コスト削減効果
AGFの導入には初期投資が必要ですが、長期的には人件費や事故による損失コストを削減できるメリットがあります。特に、無人搬送フォークリフトの導入によって人が行う業務をロボットに代替できるようになるため、直接的な人件費の削減だけでなく、スタッフの求人広告費用や教育コスト、事故による損害など、付随するコストも削減されることが期待できます。
また、AGFはエネルギー効率が良く、環境負荷の低減にも寄与するため、持続可能な物流体制の構築にも貢献します。
作業環境の柔軟性
AGFは固定式のコンベアなどと異なり、柔軟なルート設定が可能です。工場や倉庫のレイアウト変更にも容易に対応でき、限られたスペースを効率的に活用することができます。また、安全柵などの設置が不要なため、作業スペースの有効活用が可能になります。
商品がたっぷり積まれた棚を人が持ち上げるような重労働も、AGFの導入によって機械が自動で運んでくれるため、人の作業負担は大幅に軽減されます。重量物の運搬から人が解放され、フォークリフトの資格や操作技術を持つ人でなければできない作業も減少します。
AGF導入の際の注意点
AGFの導入には多くのメリットがありますが、いくつかの注意点も考慮する必要があります。
初期導入コストと運用体制
AGFの導入には本体費用に加え、インフラ整備(磁気テープ敷設、反射板設置など)やシステム開発が必要です。特に中小企業にとっては大きな投資となるため、ROI(投資対効果)の検討が不可欠です。また、定期的なメンテナンスや運用体制の整備も必要となります。
環境要因の考慮
AGFを効果的に運用するには、適切な床面状態の確保や、十分な通路幅の確保が必要です。また、AGFの走行に影響を与える可能性のある環境要因(強い日光、振動など)についても考慮が必要です。
正確な位置決めの重要性
AGFの運用では、正確な位置決めが重要です。パレットやラックの位置ずれが大きいと、正確なピッキングや積み下ろしができない可能性があります。このため、作業環境全体での位置精度の管理が重要になります。
柔軟性の限界
AGFは、突発的な作業変更に対応しづらい面があります。人が操作するフォークリフトのように、臨機応変な判断ができないため、荷物の形状や重量が大きく異なる場合、プログラムの変更が必要になることもあります。
市場展望と導入支援の動き
AGFの市場は今後も拡大が見込まれており、政府による支援も進んでいます。経済産業省の「持続可能な物流を支える物流効率化実証事業」など、物流施設の自動化・機械化に資する機器・システムの導入を支援する取り組みも始まっています。
まとめ
人手不足や安全性の向上、作業効率の改善など、様々な課題を抱える荷役現場において、AGFは有力な解決策として注目を集めています。24時間の稼働能力や人的ミスの低減、コスト削減などの多くのメリットがあり、今後も導入が加速することが予想されます。
一方で、初期導入コストや環境要因の考慮、正確な位置決めの必要性など、導入の際には検討すべき課題もあります。これらの点を十分に考慮した上で、自社の荷役現場に最適なAGFの導入を検討することが重要です。
物流業界が抱える構造的な課題の解決に向けて、AGFは今後ますます重要な役割を果たしていくでしょう。
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