物流業界における倉庫管理システム(WMS)とは?

WMS(Warehouse Management System)は物流業界における重要なシステムとして広く認知されています。本記事では、WMSの基本的な概念から機能、種類、メリットとデメリット、そして他のシステムとの違いまで、包括的に解説します。
WMSの定義と基本概念
WMSは「Warehouse Management System」の略称で、日本語では「倉庫管理システム」と訳されます。このシステムは、倉庫内の物流業務を円滑化し、効率的に管理するために開発されたものです。
基本的な役割と位置づけ
WMSは倉庫内の物流を円滑化するためのシステムで、在庫など実際の「物」を管理するために使用されます。製造業における製品や原料、小売業・EC事業における商品などが管理対象となります。従来は手書きの台帳や表計算ソフトで倉庫作業を行うことも可能でしたが、消費者ニーズの多様化に伴い、正確かつ迅速なモノの供給が求められるようになりました。
WMSは入荷・出荷・保管という倉庫内の業務について、バーコードリーダーなどを用いて作業の精度と効率化を支援する仕組みです。物流の人手不足がクローズアップされる中、作業進捗や生産性の可視化、物流ロボット・AI・センサーなどデジタル技術の活用がキーポイントとなっています。
WMSの主要機能
WMSには多数の機能がありますが、主に4つの基本機能に大別されます。
入荷管理機能
入荷管理機能では、倉庫に入ってきた商品を検品し、所定のロケーションへ保管する作業を支援します。入荷は倉庫作業の最初の要となり、この時点で予定との差異や期限などの基本的なチェックを行い、ロット情報を収集することで多様な出荷ニーズに対応できます。バーコードがない場合は、この段階でラベルを印刷して貼付する必要があります。また、作業者を迷わせないように推奨の保管先(ロケーション)を指示する機能も備わっています。
出荷管理機能
出荷管理機能は、出荷の依頼に従って所定の場所から商品を取り出し、決められたルールに従って梱包・出荷する作業を支援します。先入先出(さきいれさきだし)、期限・ロット管理、ラベル貼付、納品書など、届け先によって様々なルールが設定されており、それが正しく行われるようにWMSで制御します。出荷は倉庫作業で最も効率化が求められる部分であり、作業効率を高めるためにオーダーピッキング方式、トータルピッキング方式など作業方法も柔軟にコントロールできます。
在庫管理機能
在庫管理機能は、何が、どこに、どれだけ保管されているかという基本情報と、荷姿や期限・ロットなどの詳細情報を一元管理します。近年はクロスドッキング(入荷即出荷)など作業スピードが要求されており、リアルタイムでより詳細な在庫情報が求められています。WMSでは現在保有している在庫の状態を確認でき、確認できる項目は管理対象の商品によって異なります。保管場所や入荷日、数量のほか、食品であれば消費期限、アパレル商品であればカラーやサイズなどの情報も管理できます。
進捗管理機能
進捗管理機能は、WMSを導入する上で重要なポイントとなる機能です。人手不足時代の倉庫作業において、様々な切り口で作業状況を可視化することが非常に重要です。「出荷作業状況」一つをとっても、フロア別、作業チーム別、得意先別、運送会社別など様々な切り口があります。必要な情報を迅速かつ見やすく可視化することが生産性向上につながります。
WMSの種類と選び方
WMSには様々な種類があり、それぞれ特性が異なります。自社のニーズに合わせて最適なシステムを選択することが重要です。
WMSの種類
WMSは大きく利用環境と製品タイプによって分類できます。
利用環境による分類
- クラウド型WMS:インターネット上のベンダーのサーバーを経由してWMSを利用します。ネット環境さえあれば、社外のPCやスマホなど複数の端末で利用可能です。リモートワークに対応しやすく、サーバーリソースに柔軟性があり、運用や保守管理はサービス提供者に委託できるため、手軽に導入できるのがメリットです。
- オンプレミス型WMS:自社サーバーを使ってシステムを運用します。社内PCの利用が基本となります。事業内容に合わせた自由度の高いカスタマイズができるほか、情報漏洩リスクが少ないのがメリットです。一方で、初期費用が高額になりやすく、サーバーの障害対応などを自前で行う必要があるというデメリットもあります。
製品タイプによる分類
- パッケージ型WMS:あらかじめ必要機能が作り込まれたソフトウェアを購入し、クラウドまたはオンプレミス環境で使用します。低予算でスピーディに導入できるので、お試し利用や短期利用に向いています。ただし、使いにくさを感じたり、必要以上の機能を持て余したりするケースもあります。
- スクラッチ型WMS:自社の要件に合わせて一から開発するタイプです。カスタマイズ性が高く、自社の業務フローに完全に適合したシステムを構築できますが、開発コストと時間がかかるというデメリットがあります。
WMSの選び方
自社に適したWMSを選ぶには、以下のポイントに留意すると良いでしょう。
業界・業種に合っているか確認する
業界によって求められる業務は異なります。例えば、アパレル商品と冷凍食品では、保管する場所や環境はまったく違います。倉庫内での作業や設備も異なるものになるでしょう。
自社の業界や業種をよく考慮し、同じ業種や業態の企業での導入例があるシステムを選ぶと良いでしょう。
データ共有の可能範囲を確認する
拠点間あるいは他社とのデータ共有が可能かどうか、その範囲を確認しましょう。データ共有できる範囲によって、倉庫業務の効率が大きく変わります。
例えば、商品コードやバーコードを用いて取引先とデータ共有できれば、データ入力の手間を大幅に削減できます。複数の拠点間でデータ連携できるほうが業務効率が良く、人手を介する作業が減るため、人為的ミスの削減にもつながります。
サポート・セキュリティを確認する
システムの導入や運用について、ベンダーのサポートを受けられるのか確認しましょう。電話やチャット、現場訪問などのサポート体制があるかどうかは重要なポイントです。
WMS導入のメリットとデメリット
WMSを導入することで様々なメリットが得られますが、同時にデメリットもあります。ここでは、それぞれについて詳しく解説します。
WMS導入の7つのメリット
1. 人為的ミスを減らすことができる
倉庫業務は単調な作業が多いため、慣れてくると注意力が散漫になりがちです。データの入力でも、目視で手入力していれば間違えることもありますが、ハンディターミナルでバーコードを読み取って管理すれば入力ミスのリスクを減らすことができます。WMSはハンディターミナルなどの端末を使用してバーコードによる検品・照合作業を行うため、人為的ミスを防げます。
2. 煩雑な業務を効率化・自動化することができる
人の手が介在する業務を減らすことで効率化できます。商品の在庫数は入荷・出荷で常に変動し続けるものですが、返品等のイレギュラーな変動も多々発生します。返品が発生した際の対応は、出荷履歴や在庫数の修正、今後の入荷予定の見直しなど煩雑になりがちですが、WMSの返品管理機能を活用すれば効率よく短時間での対応が可能になり、人手を減らすこともできます。
3. 倉庫管理業務の標準化ができる
倉庫管理には一定の習熟が必要です。特に在庫の所在は熟練者の記憶に頼ることが多く、場所が変わると混乱が生じることもあります。しかしシステムによってロケーションを適切に管理し、それをスタッフとすぐに共有できれば、そのような混乱を避けることができます。習熟度を問わず、未経験者でも一定の水準で作業を進めることが可能になります。
WMSによって業務を標準化すると、荷主や品目が増えても短時間で出荷指示や在庫管理ができるようになります。また、ロット管理や品目についても一元管理できるので、管理がとてもシンプルです。
4. 在庫状況などの情報を可視化できる
WMSは連携すれば他の倉庫や取引との情報共有も可能です。つまり、より広い視野で状況を把握できるようになります。このように全体を見通せることで、より適切な状況判断を下せるようになるでしょう。
5. 情報をリアルタイムで共有できる
ハンディターミナルや本社の基幹システムと連携させることにより、リアルタイムで状況を把握できます。タイムラグがないためデータの信頼性が高く、誤った状況判断のリスクを減らすことができます。
6. 倉庫内のロケーション変更で、簡単に省スペース化ができる
倉庫内のロケーション管理を容易にできます。ロケーションを変えても、それがすぐにピッキングリストやハンディターミナルに反映されるため、スタッフの間で混乱をきたすことなくロケーション変更ができます。ロケーション変更ができれば、結果的に無駄なスペースを省いて効率的に場所を使うことができるようになります。
7. コストを抑えることができる
人が必要な手間を削減することができるため、人員を削減することができます。また作業を標準化して誰でもできるようにすることができるため、アルバイトやパートも大きな戦力となります。その結果、人件費を削減することができます。
WMS導入の2つのデメリット
1. 導入目的が曖昧だと期待した効果が得られないリスクがある
何が目的でシステムの導入を検討するのかを把握することが大切です。WMSにはさまざまなメリットがありますが、自社にとって一番必要な機能は何か、WMS導入によってどのような結果を出したいかは企業ごとに異なります。
導入目的を明確にしないまま導入してしまうと、期待していた効果が得られなかったり、自社の業務で必要な機能がないシステムを選んでしまうことも考えられます。導入後にWMSの効果を最大限に引き出すために、導入目的を明確にしておきましょう。
2. 導入自体にコストと手間がかかる
WMSを導入することで、物流作業のコストと手間を削減することができます。しかし、システムの導入に伴って新たな手間も生じます。
自社運用型であれば設備導入のコストもかかりますし、それを使う人の教育にも費用と時間が必要になることでしょう。十分に使いこなせれば後に取り返せるコストではありますが、導入前に把握しておく必要があります。
結論
物流業界は常に効率化と正確性の向上を求められています。WMSはこれらの要求に応えるために不可欠なシステムとなっています。
WMSは倉庫内物流を円滑化するためのシステムとして、在庫管理、入出庫管理、進捗管理、ロケーション管理などの機能を提供します。人手不足が深刻化する中、WMSの導入によって人為的ミスの削減、業務の効率化・自動化、倉庫管理業務の標準化、情報の可視化とリアルタイム共有など、多くのメリットを得ることができます。
一方で、導入目的が曖昧だと期待した効果が得られないリスクがあることや、導入自体にコストと手間がかかることなどのデメリットも存在します。しかし、これらのデメリットは、導入前に目的を明確にし、適切な計画を立てることで回避または軽減することが可能です。
WMSは物流業界における重要なツールであり、適切に導入・活用することで、物流業務の効率化と高度化を実現し、競争力の強化につなげることができるでしょう。
物流のDX化はL&N JAPANにお任せください!
L&N JAPANは、これひとつで工場内のすべての業務プロセスをデジタル化できます。

- 会社紹介
- L&N JAPANができること
- 製品一覧